消費税還付とは何か
1 消費税の仕組み
消費税は、様々な段階の取引の中で課税されますが、最終的にはエンドユーザーが消費税を支払うことになります。
事業者は、取引の中で預かっている消費税を計算して、消費者の代わりに納付します。
売上を計上した際に預かっていた消費税よりも、経費を支払った際に支払った消費税が多いときには、その差額分を返してもらうことができます。
これを、消費税の還付といいます。
2 消費税の還付が受けられる場合
決算が赤字である場合は、消費税の還付を受けられる可能性があります。
売上に伴い預かる消費税よりも、経費を支払う際に含まれている消費税が多くなる可能性が高いからです。
ただし、経費の中には、支払う際に消費税が含まれないものもあります。
例えば、従業人に対する給料、固定資産税等の租税公課、保険料、商品券・プリペイドカードの購入費用を経費として支払った場合は、消費税が課されない取引となります。
そのため、会社や事業の決算が赤字の場合でも、必ず消費税の還付を受けることができるわけではないことには注意が必要です。
次に多額の設備投資を行った場合は、消費税の還付を受けることができる可能性があります。
高額な設備投資を行った場合には、その設備投資の支払いの際に多額の消費税を支払うことになります。
そのため、その高額な設備投資を行った年の売上次第では、消費税の還付を受けることができます。
例えば、税込5500万円の設備投資を行った場合には、消費税を500万円(消費税10%の場合)支払っていることになります。
これに他の経費に含まれている消費税も加えて、売上にかかる消費税よりも多ければ、消費税の還付を受けることができることになります。
なお、高額な設備投資を行ったとしても、一括で経費とすることはできないので、赤字にはなりにくいと言えます。
また、輸出業を営んでいる場合は、消費税の還付を受けることのできる可能性が高いです。
消費税は、国内において、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡及び外国貨物の引き取りの場合に課税されます。
そのため、輸出の場合、つまり、国外で消費されていることが予定されている場合には、売上に消費税が含まれていません。
他方、国内の仕入れ等には消費税が課税され、それを支払います。
そのため、輸出業を中心に営んでいる場合には、消費税の還付を受けることのできる可能性が高いです。
3 消費税の還付ができない場合
免税事業者の場合は、そもそも消費税を納付する必要が無いため、消費税の還付を受けることもできません。
また、簡易課税制度を選択している場合には、売上として預かった消費税から計算して納付税額を算出するため、消費税の還付を受けることができません。
免税事業者、簡易課税制度を選択している事業者の方が、消費税の還付を受けるためには、課税事業者になったり、簡易課税制度をやめたりする必要があります。
その際には注意すべき点も多いので、税理士にご相談することをおすすめします。
4 消費税の還付を狙ったスキーム
かつては、主に大家さんを対象に、自動販売機スキーム、金地金スキームなど、意図的に消費税の還付を生じさせるスキームが横行していました。
しかし、これらのスキームはいずれも、法改正によって、現在ではできなくなっています。
特に、令和2年の金地金スキームを法改正によって防止した際には、いたちごっことなることを防止するため、居住用不動産の賃貸業における仕入れ税額控除を利用した消費税の還付スキームは一切できないことになりました。
このような消費税の還付スキームは、時代とともに新しい手口が必ず出現しますが、税務当局は非常に厳しく見ており、法改正も頻繁に行われますので、過信しないことが大切です。
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